@article{oai:ksu.repo.nii.ac.jp:00010860, author = {高山, 秀三 and TAKAYAMA, Shuzo}, journal = {京都産業大学論集. 人文科学系列}, month = {Mar}, note = {『魔の山』は,主人公ハンス・カストルプがいとこの見舞いで訪れたダヴォスのサナトリウムでたまたま結核に罹患していることを発見され,7年間をそこで過ごすことになるという話である。この小説の根底にあるのは,ハンスの結核への罹患という現象である。ハンスは小説冒頭,ダヴォスに到着するや,高熱を発し,結核患者として療養生活に入ることになる。思いがけないかたちで結核患者となったハンスは,サナトリウムでの療養生活をありあまる時間と安楽な生活を享受できる機会として快く受け入れるが,その病状は7 年間をとおして軽症と呼べるものだった。ハンスは結核への罹患のおかげで俗世の仕事から離れ,多くの医療関係者や結核患者との接触をとおして,人文学的な学びや人間観の深化を得ることになる。 『魔の山』は著者自身によって,また多くの読者によって主人公の自己探求を基軸とする文学ジャンルである教養小説とみなされている。この「教養獲得」の舞台はサナトリウムであり,その大本はハンスの結核である。しかし,ハンスの結核は担当医すらその正体がつかめない,そもそも結核と呼べるかどうかが怪しいものとして描かれている。ハンスは冒頭で「単純な青年」として紹介されるように,一見素朴な造船技術者であるが,その反面でロマン主義的な死や病への親近性をひそかに抱えている。ハンスの病は患者の獲得を欲するサナトリウムという株式会社と,もともと死と病への傾斜をもち,病者となることによってそんな自分にふさわしい自由な生活を得ようとするハンスが結託して作り出した架空の病という要素をもっている。マンはその自作解説で『魔の山』を「肺結核を土台に,その御旗のもとに更新されたドイツ教養小説」であり,そのパロディーであると語っているが,実はこの小説はその土台である主人公の肺結核そのものが内実に乏しいものであるがゆえに,その上にある小説世界そのものが虚実のあわいに立つような究極のパロディーなのである。『魔の山』の主人公の結核がどの程度真性のものであるかということは,これまで(特に日本では)あまり論じられてこなかった。本論はその点に焦点を当て,この問題が作品の内容に決定的に関わっていることを示した。}, pages = {125--155}, title = {『魔の山』における結核とは何だったのか}, volume = {56}, year = {2023}, yomi = {タカヤマ, シュウゾウ} }