@article{oai:ksu.repo.nii.ac.jp:00001251, author = {岡本, 淳子 and OKAMOTO, Junko}, journal = {京都産業大学論集. 人文科学系列}, month = {Mar}, note = {スペインの劇作家アントニオ・ブエロ・バリェホが1964年に執筆した『バルミー博士の二つの物語』は拷問が存在する社会を描く。本作品で警察の拷問に焦点を当てるブエロの意図が,国家権力の実像の提示と批判であることは容易に察せられる。しかし,作者は直接的に国家権力を攻撃するのではなく,登場人物の様々な権力関係を描き,権力関係が逆転可能であることを示唆することで国家権力への抵抗の可能性を提示する。  本論の目的は,『バルミー博士の二つの物語』における登場人物間の権力関係を分析し,権力関係の逆転を可能にする要素を明らかにするとともに,作品内に描かれる暴力を考察し,暴力を行使する国家権力とその抵抗の関係を明らかにすることである。  まず,家父長制を基調とする権力関係において主人公が被るジェンダーアイデンティティおよびセクシュアリティの抑圧を考察する。そして,彼女が警察での拷問についての真実を知ることにより,姑および夫との関係が逆転すること,すなわち無知から真実の認識への移行が権力逆転の動機となることを提示する。 次に,無知こそが拷問の共犯者を作り出し,現実逃避,現実否定する者たちが国家権力への抵抗を不可能にすることを見ていく。  続いて,警察での拷問実行者たちに焦点を当て,権力行使の手段としての暴力を考察する。支配する側,抑圧する側は,自らの暴力行為を正当化するために攻撃する相手に「病気」あるいは「非人間」という印をつける。正当性は元来あるものではなく,後から構築されるものである。  最後に,暴力と抵抗との関係を見る。「権力のある所には抵抗がある」というフーコーの言葉どおり,権力行使は自ら抵抗を作り出す。その抵抗が有効なものとなるためには,権力行使される側がシステムに取り込まれることなく真実を認識することが重要になる。主人公メアリーによる夫殺しは国家権力が作り出した抵抗であり,国家権力のシステムから抜け出せない歯車としての夫を殺すことは,法と密接な関係にある国家暴力に亀裂を入れることになる。}, pages = {131--145}, title = {アントニオ・ブエロ・バリェホの『バルミー博士の二つの物語』にみられる国家権力と抵抗}, volume = {34}, year = {2006} }