@article{oai:ksu.repo.nii.ac.jp:00001256, author = {瀬邊, 啓子 and SEBE, Keiko}, journal = {京都産業大学論集. 人文科学系列}, month = {Mar}, note = {中国では近年巨額コストをかけた映画やハリウッド映画の人気を集め,低コスト作品や地方制作の映画がヒットすることが難しい情況にあった。そんななか2002年,地方の映画制作所で制作された低コスト作品の映画『暖春』が異例のヒットを飛ばした。映画『暖春』は最初制作された山西省で都市部のみならず,山西の貧困地区でも人気を博した。そのため『暖春』の人気は口コミで広がり,山西省のみならず北京や上海,香港などの大都市でも成功をおさめ,わずか200万元の制作費に対して,1,500万元の興行収入をあげ,“暖春現象”と呼称される現象にまでなった。  本稿ではこの『暖春』現象を通して,中国における映画市場の現状について概観するとともに,『暖春』の成功の要因を分析した。  『暖春』は山西と思しきある貧困農家に少女が拾われたことで繰り広げられる人情ドラマである。“暖春現象”にまで昇華したのは,フィルム・コピー数が異例の560強を数え,また制作費に対しての利益率の高さによる。同時期に公開された映画『英雄(ヒーロー)』の興行収入と中国では公開劇場数が多かった『ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還』のフィルム・コピー数の2つの側面から比較して見ると,『暖春』のヒットは二級市場におけるヒットであることが分かる。この点から中国の映画市場の二分化がより明確になり,『暖春』現象が「二級」市場として歯牙にもかけられなかったマーケットの新たな市場性を示唆したことが明らかとなった。  『暖春』は「泣ける」映画として人気を博したが,驚異的な興行収入をあげた『英雄』の存在がこのヒットと関連していると考えられる。まずは『英雄』を凌駕したという話題性に加え,『英雄』などの娯楽大作に対して,徹底した人情ドラマを分かりやすい手法で表現したことがあげられる。次に山西という特異な地域で制作,公開されたことによる。山西は中国において貧困地域であり,映画のなかで描かれた農村における理想像は,自分たちの貧困からの脱出への活路を示していた。主人公たちの苦しく貧しい生活を自分たちの現実に投影しながらも,教育を受けて大学に進学し,かつ卒業後に村へ戻って村に貢献するという理想的な姿を示したことで,多くの貧困地域の観客を惹きつけた。  全国でヒットした背景にはさらに主人公小花を演じた張妍のけなげな演技がある。小花の姿はあたかも「おしん」のようであり,ここから『おしん』型のヒットと言うこともできる。  以上のように,『暖春』現象から中国における映画市場の二分化の現状が明確になり,『暖春』現象が示唆した新たな市場が中国映画界にとって新たな命題となったことが分かる。そして山西という特異な地域であったからこそ『暖春』が受け入れられ,全国に波及し『暖春』現象にまで昇華されていったのである。}, pages = {209--222}, title = {『暖春』現象に見る中国映画}, volume = {34}, year = {2006} }