@article{oai:ksu.repo.nii.ac.jp:00001358, author = {並松, 信久 and NAMIMATSU, Nobuhisa}, journal = {京都産業大学論集. 人文科学系列}, month = {Mar}, note = {真境名安興(まじきなあんこう)(1875–1933)は明治期から昭和初期における沖縄史研究者である。真境名はその生涯において多くの論考を残し,それらは『真境名安興全集』全4巻にまとめられている。なかでも代表的な著書『沖縄一千年史』は1923(大正12)年に刊行されるが,約50年間にわたって読み継がれ,沖縄史学を代表する著書となっている。しかし真境名には多くの論考や遺稿があるものの,その研究の全貌はいまだ明らかにされていない。沖縄史に関するぼう大な研究業績があるにもかかわらず,研究史上における真境名の位置付け,およびその研究の特徴などが明らかにされていない。本稿は真境名の経歴をたどりながら,その研究の特徴を考察して,沖縄史学が形成されていった過程を明らかにするものである。  真境名は旧制中学校在学中から沖縄史に関心をもち始めている。当初は文学論考などを執筆しているが,徐々に歴史へと関心を移す。当時の杣山(そまやま)問題に対する沖縄県政の批判という意味で,林政史や農政史などに関する論考を執筆する。そして真境名は県史編纂事業に関わったことから『沖縄現代史』,『沖縄一千年史』という著書を発表する。『沖縄現代史』は沖縄近代史を扱った先駆的な業績であり,とくに教育の項目が詳細に説明されている。一方,『沖縄一千 年史』は沖縄の通史として先駆的な業績であり,その特徴は実証的であると同時に網羅的でもあり,沖縄史を研究する際の参考書あるいは百科事典とされる。したがって『沖縄一千年史』は史実を記述したものであって,史論を展開したものではないとされている。  しかし真境名に歴史観がなかったわけではない。真境名の沖縄史学の特徴には主に五つの点がある。第一に方言(沖縄語)への関心の深さがみられる。第二に沖縄史を多角的にとらえようとしている。第三に現在では失われてしまった貴重な史料を利用している。第四に家譜を広く引用している。第五に古老から直接,聞き取り調査を行なっている。これらの特徴から,真境名の歴史観を考えれば,現在の問題意識から歴史を総合的な視点でとらえたこと,さらに歴史の主体を重視したことになる。この歴史観は真境名の沖縄史学が郷土,つまり沖縄に立脚したものをめざそうとした過程で生まれたものである。  沖縄史学を展開した東恩納寛惇(1882–1963)との違いは,東恩納は東京帝国大学で歴史理論を学び,実証主義的な方法を身に付けて,沖縄史に取り組んだ。この一方で真境名は歴史理論を学ぶ機会をほぼもたなかったために,史料に関して徹底的に厳密性を追求し,その総合性を考慮に入れた沖縄史学を展開した。この点が真境名の沖縄史学を支えたのであって,歴史理論が支えたわけではなかったといえる。, 1 はじめに 2 歴史への関心 3 沖縄県政への批判 4 歴史学の道 5 歴史書の誕生 6 歴史観の有無 7 郷土文化史の展開 8 結 語}, pages = {1--34}, title = {真境名安興と沖縄史学の形成}, volume = {45}, year = {2012} }