@article{oai:ksu.repo.nii.ac.jp:00001375, author = {生田, 眞人 and IKUTA, Masato}, journal = {京都産業大学論集. 人文科学系列}, month = {Mar}, note = {本論考は「ドイツ啓蒙主義のドイツ演劇への影響について」という総合テーマのもと,順次発表予定の総合研究の1回目として,主に劇作家フランツ・グリルパルツァー(1791–1872)を扱う完結論文である。以後,グリルパルツァー以外にレッシング,ウィーンロマン派の劇作 家群につき完結論文を順に発表していき,総合研究をまとめる予定とする。 グリルパルツァーには後期三部作として『ハプスブルク家の兄弟争い』(Ein Bruderzwist in Habsburg),『トーレドのユダヤ娘』(Die Jüdin von Toledo),そして『リブッサ』(Libussa)を創作したが,すべて遺作の形で死後になって初めて公刊された。本論考では独特の「歴史劇」 である『リブッサ』を解読し,グリルパルツァーの作品に込められた演劇理念と主要テーマを理解する。 解読の方法として,まずグリルパルツァーの生きた時代とその前後での主要な文学潮流(「ウィーン・ロマン主義」や「ワイマール・古典主義」など)や思想・芸術概念(「オースト リア的バロック」や「啓蒙主義」など)を導入し,比較検討しながら『リブッサ』を解明する。 特に「啓蒙主義」の影響は大きいが,またその限界もグリルパルツァーによって認識されており,その肯定的側面は作品の中ではプリーミスラウスが人民啓蒙,教化のもと,都市国家プラハ建設に邁進し,楽観的に歴史の未来への展望を打ち出すところに表われている。逆にその否定的側面は,リブッサの思考と行動に込められた「歴史に対する進歩理念の否定」であり,「啓蒙主義」への懐疑である。それは本論考ではW. ベンヤミンの「敷居論」を援用して論証した, リブッサの立ち位置の意味づけである。すなわちリブッサは都市国家プラハという「敷居」(語源のPraga の具体的な意味)に直面して,先に進むこともしないし,歴史の流れにあって後退することもなく立ち尽くすのである。これを人間の歴史上での歩みに置き換えれば,人類の来し方を省察し,さらには行く末の未来を予感し,リブッサは歴史を俯瞰できる位置を得たといえる。 グリルパルツァーの後期三作品は「歴史の見方」を主要テーマとする点では共通しており, その中でも特に『リブッサ』は,人間社会の織り成す歴史につきさまざまな想念や意識形成を我々に仲介してくれる。なんとなれば,このように歴史につき,さまざまな観点から考えるよう誘われることとなれば,まさに我々もまた,今なお「世紀の敷居」に,あるいはより的確には「ミレニアム(千年紀)の敷居」という転換期に近くたたずんでいるからである。さらに付言すれば,このことをより尖鋭に意識化するよう,グリルパルツァーの『リブッサ』が打ち出すテーマは我々に要請するともいえる。}, pages = {371--387}, title = {ドイツ啓蒙主義のドイツ演劇への影響について(1) : グリルパルツァーの遺作『リブッサ』解読の試み}, volume = {45}, year = {2012} }