@article{oai:ksu.repo.nii.ac.jp:00001490, author = {WAGNER, Helmut and WAGNER, Helmut and 松川, 克彦〔訳〕 and MATSUKAWA, Katsuhiko}, journal = {京都産業大学論集. 社会科学系列}, month = {Mar}, note = {1951年に結成されたECSC(ヨーロッパ石炭鉄鋼共同体)は、戦後のヨーロッパの復興を目指す先駆的な組織であり、これが中心となって1958年にはEEC(ヨーロッパ経済共同体)が発効した。1967年にはEURATOM(ヨーロッパ原子力共同体)をあわせ、これら三つの共同体の執行、決定機関の併合を伴って、EC(欧州共同体)の概念を使用するようになった。その後、イギリス、ギリシア、スペインなどの諸国が順次加盟して拡大されていき、1993年には12カ国の間でEU(欧州連合)が正式に発足した。ここにECはEUと改名されたのである。2004年には東欧、南欧の10カ国がEUに新たに加盟し、2007年1月1日現在27カ国の加盟国が共同体を形成している。EUはヨーロッパだけに留まらず、地理的にはトルコまでの拡大も検討されている。  ところが、その法秩序についてはいまだに理解されていない部分があり、そのことがすでに加盟している諸国の国民に不安を引き起こしている。独立意識の強いヨーロッパの国家がEUという全体的な組織によって主権を奪われるのではないかという懸念である。加盟諸国の主権を統合することによってEUは、かつて歴史上にたびたび出現したような、スーパーパワーに成長するのではないかという恐れがヨーロッパ諸国民の一部には根強く存在しているのである。  独立した主権国家を糾合してひとつの組織を形成する場合、その法秩序を説明する方法として従来二つの法的概念があった。それは連邦国家および国家連邦である。この概念は単純化すれば、国家が連邦を形成する際にいずれの機構がより強大な力を発揮するかと理解することができる。つまり連邦の権力が加盟国家の上位にくるならば、各加盟国家の主権が侵害され、逆に連邦を形成する加盟国家の権力のほうが強力な場合、連邦とは名目上の存在にしかすぎなくなる。これは、いわば二元論的な対立であった。  EUの場合はどうだろうか。先日国民投票においてEU憲法を拒否したフランス、オランダの例などは、いずれもEUがいつの日にか加盟国の主権を蹂躙するような超国家となるかもしれないとの疑念から来たものである。しかしながらEUの機構は、上記いずれにもあてはまるものではない。EUの法秩序は、伝統的な「二元論」をとらないのである。EU憲法にたいする理解不足こそが、加盟諸国の国民に不安を与えている原因である。それは、EU憲法の規定を正確に知ることによって解消されるであろう。  著者は、EUの法秩序を説明するために、試みにドイツ語の“Bund”をあてはめた。“Bund”理論によれば、加盟している主権国家とEUの間には上下優劣の区別がなく、権力は双方の了解により流動的に移行するとされる。この説明はEUを理解する上で最も適切な概念のひとつである。しかしながら、それは唯一のものではない。憲法学者はじめ専門家には、EUとは何かという質問に答えるために、ヨーロッパの国民すべてが理解できるような新しい概念を見つけ出す努力をすることがもとめられている、と結論づける。  著者ワグナー博士は1929年東プロイセン生まれ。テュービンゲン大学より政治学博士号を受ける。シュツットガルト大学でGolo Mann教授の助手を務めた後、1972年ベルリン自由大学の正教授。研究領域は国家、東西ドイツおよび朝鮮の統合問題、ヨーロッパ統合問題等など。この方面に関する著書が多数あり、数カ国語に翻訳されている。日本、アメリカ、中国、ポーランド、韓国などの大学から客員教授として招聘された。ベルリン自由大学を1995年に退職。現在、同大学名誉教授。, 序言 1.賢明な政治家ほど慎重になる! 2.専門家はアイデア不足! 3.大衆に不安は残る! Ⅰ.国家の連邦かあるいは連邦の国家か Ⅱ.Bund は問題解決の手段になるのか Ⅲ.EU は怪物国家になるとなぜ疑われるのか Ⅳ.結論:いつ、そしていかにして希望を見出すか}, pages = {181--197}, title = {EUの法秩序について : その定義を求めて}, volume = {24}, year = {2007}, yomi = {マツカワ, カツヒコ} }