@article{oai:ksu.repo.nii.ac.jp:00001580, author = {吉冨, 泰央 and YOSHITOMI, Yasuo}, journal = {京都産業大学論集. 自然科学系列}, month = {Mar}, note = {細胞膜貫通型のプロテオグリカンであるシンデカンはそのヘパラン硫酸鎖を介して様々な増殖因子と結合し細胞内シグナル伝達系を調節したり,また,細胞外マトリックスの受容体として機能して細胞接着に関与することが明らかにされている.  本研究室ではこれまでに,マウス・ルイス肺癌から自然転移能の違いに基づいてクローニングした転移能の異なる株細胞を樹立しており,これらの細胞の示す一次腫瘍組織形成において異なった細胞外マトリックス依存性を示すことを明らかにしている.低転移性P29細胞は強い間質誘導を示し,誘導した間質細胞の形成するフィブロネクチンを主成分とする間質型細胞外マトリックス依存的な腫瘍組織形成を示す.それに対して,高転移性H11細胞は自らが形成す る腫瘍基底膜依存的な腫瘍組織形成を示す.また,この細胞外マトリックス依存性の違いを反映して,これらの細胞は培養下で異なったフィブロネクチン接着応答性を示す.すなわち,P29細胞はフィブロネクチン接着依存的にアクチンストレスファイバーを形成するのに対して,H11細胞はアクチン繊維が細胞辺縁に局在した皮質型アクチンを形成する.これまでの研究においてこの違いが細胞表層シンデカン-2の発現量の違いに依存していることを明らかにしている.  本研究において転移能とシンデカン-2発現量との間に逆相関の関係があることを見いだし た.そこで,この逆相関の背後にある因果関係を明らかにするため(1)シンデカン-2強制発現細胞を樹立し,シンデカン-2分子の機能としてのシグナル伝達の観点からがん転移の機構を解析した.(2)細胞表層のヘパラン硫酸鎖を介した細胞接着の観点からがん転移の抑制を試みた.その結果,(1)シンデカン-2強制発現細胞は転移が大きく抑制された.転移の過程に関与することが明らかにされているマトリックス・メタロプロテアーゼ(MMP)の関与を解析したところ,MMP-2は転移能の高低に拘らず同程度発現していたのに対して,高転移性細胞培養系に おいてはMMP-2の高い活性化がみられ,シンデカン-2を強制発現することによってその活性化が抑制された.さらに,シンデカン-2を介したMMP-2の活性化抑制はシンデカン-2のヘパラン硫酸鎖に依存した現象であることも明らかになった.また,これらの細胞の形成する一次腫瘍組織形成にも違いがみられ,シンデカン-2強制発現H11-SN2細胞は低転移性P29細胞と同様の間質誘導能を獲得し,腫瘍血管形成も高転移腫瘍の示す類洞様血管形成から低転移性腫瘍の示す毛細血管形成へと変化した.これらの一次腫瘍組織形成の違いは転移能の違いに深く関係していることを示唆している.(2)ヘパリンおよび抗凝固活性を低下させた化学修飾ヘパリンをがん細胞移植時に体液中に投与することにより転移を大きく抑制することに成功した.この転移抑制は抗凝固活性の結果ではなく,癌細胞の表層に存在するヘパラン硫酸を介した癌細胞の基底膜への接着を投与ヘパリンにより競合的に阻害した結果であることが示唆された.  本研究ではまた,ルイス肺癌細胞による皮下腫瘍の作成に際して,転移能の高低に拘らず個体の死亡時期がほぼ同じであることに着目し,その原因を検討した.その結果,低転移性株細胞は腫瘍の周縁組織への浸潤性が非常に強いことを見出した.浸潤能の強さに一致して,低転移性P29細胞および,H11-SN2細胞は特異的にMMP-3を発現しており,その発現はシンデカン-2の発現と正の相関性のあることを明らかにした.MMP-3が浸潤に直接的に関与しているかどうかは明らかにし得なかったが,この発見は,癌細胞の結合組織への浸潤が細胞外マトリックス融解酵素MMP-3により仲介されていることを強く示唆するものである.  これらの結果はまた,他の腫瘍系で考えられているのとは異なり,転移能の高い細胞は必ずしも高い浸潤能をもつとは限らないことを示している.少なくともルイス肺癌の転移モデルにおいては,癌細胞の浸潤と転移は独立した細胞活性であり,別々のシグナルカスケードの結果であると考えられた.さらにルイス肺癌においては,転移と浸潤はともにシンデカン-2を介した細胞動態であり,異なるMMPによって担われていることが強く示唆された., 1. 緒論 2. 結果 2.1 マウス・ルイス肺癌由来の転移能の異なる株細胞におけるシンデカン-2発現量と転移能 2.2 転移能の異なる株細胞の一次腫瘍組織形成 2.3 ルイス肺癌細胞の発現するマトリックス・メタロプロテアーゼ(MMPs) 2.4 化学修飾ヘパリン投与による実験転移能の抑制 2.5 シンデカン-2高発現性細胞の示す腫瘍周縁組織への浸潤能 3. 考察 3.1 シンデカン-2発現量と転移 3.2 シンデカン-2によるMMP-2活性化の抑制 3.3 ヘパリンによる転移抑制 3.4 シンデカン-2高発現による一次腫瘍組織形成への影響 3.5 シンデカン-2発現と浸潤能 3.6 ルイス肺癌細胞における転移能と浸潤能}, pages = {140--176}, title = {マウス・ルイス肺癌細胞の転移・浸潤におけるヘパラン硫酸およびシンデカン-2の役割}, volume = {34}, year = {2005} }